ポイントをもう1つ、
新卒、転職にかかわらず、就職活動において苦労するのが、自己PRの作成でしょう。
就活以外で自己PRを作ることなんて、滅多にありませんし、自分では正解がわからないから苦労するのでしょう。
大学のキャリア支援課の職員など、添削をしてくれる人が身近にいれば、少しは安心できます。
ただ、残念な真実かもしれませんが、大学のキャリア支援課の職員も正解を知りません。
皆さん「何となく雰囲気で」やっています。
もちろん先輩や上司など、ベテラン職員からアドバイスを受けたり、ある程度のトレーニングを受けたりはします。
ですが正解を知っているわけではありません。
自己PRの指導・添削の真実
私は20年以上、大学や専門学校のキャリア支援室で働き、年間100人以上の自己PRをチェックしています。またそれら高等教育機関や、民間企業の採用試験面接官も10年以上やっています。
私も若手の頃は「何となく雰囲気で」学生にアドバイスしていました。
不真面目なわけではなく、先輩も上司も、誰も正解を知らないのです。
それぞれの職員がそれぞれの雰囲気で、言うなれば「好みや勘」でアドバイスしていました。
がっくりですよね。
キャリア支援課のスタッフにも、もちろん「新卒社員」がいます。
自分の就活のとき、自己分析・企業研究・面接対策・受験を、しっかりたっぷりしたスタッフもいれば、なんとなく受験したら内定し、その1社だけで就活を修了したスタッフもいます。
どちらも見事内定し、キャリア支援課のスタッフになれたわけですが、自分の就活方法しか知らないため、他人にアドバイスをするとなると、かなり不安です。
彼ら彼女らが持っているのは、自分なりの「自分だけに使えた正解」です。
しかし先輩スタッフからはこう言われます。
「○○さんすっごく面接上手だったし、自分の経験をもとにアドバイスすればいいからね!あとは慣れだよ。だんだんわかってくるから!」
なぜそんな曖昧なアドバイスをするのか。
理由は2つ。
①自分もそう教わったから
②それでうまくやれているから
その「自分だけに使えた正解」と「その後の指導経験」で、スタッフそれぞれが「自分なりの正解」を手に入れ、ベテランスタッフやプロの就職アドバイザーになります。
なんか、頼りないですよね。
でも、私はこのことを批判的に思っていません。
なぜなら、それで現実のキャリア支援現場ではうまくいっているからです。
統一的な自己PR作成メソッドなんて怖くて作れないのかもしれません。
だって「自分なりの正解」しかないのですから。
ですから全くこの現状を批判的に思っていません。
ですが、残念ながら、スタッフによって「あたりはずれ」はあります。
しかもかなりの幅でばらつきがあります。
一般的な就職アドバイザーが目指すところ
キャリア支援課スタッフや就職アドバイザーが、統一的に目指しているだろうことをあえて挙げれば、「本人を喜ばすこと」です。
それは1つの正解です。
本人が喜ぶというのは、お気に入りの自己PRが作れたということです。
それは面接試験で、自信を持って堂々と話せるということに直結します。
とても大切なことです。
「自己PR」に正解がないのだから、せめて「自信もって話せる」ことを目指すのです。
本人が納得し、「これステキー!」ってなる自己PRを一緒に作ってあげる。
これを目指している方が多いです。
ですから、キャリア支援課のスタッフであろうと、フリーの就職アドバイザーであろうと、実績を上げる優秀なアドバイザーは、「相手に寄り添い、相手を引き出し、相手に自信をつけさせる」人物であると言えます。
ただ、実は、自己PRって正解があります。
「自信もって話せる」ことじゃなく、「自己PRの内容」に、実は正解があるのです。
この一連の記事は、君が、正解の自己PRが書けるようになるための話です。
身近に就職アドバイザーがいなくても、君ひとりで書けます。
プロに寄り添ってもらうことで「自信もって話せる」状態になるのではなく、自己PRの正解を知り、正しい手順に沿って書くことで、自分一人で、自信もって話せる状態になれます。
しかも、出来上がるのは「正解の自己PR」です。
自己PRレベル
まず第1回目の今回の記事では、まず、書き出す前に知っておかなければならない、「正解の自己PR」の姿を知ってもらいます。
自己PRにレベルがあるのはご存じでしょうか。
私が発案したものではなく、すいぶん前に当時働いていた大学のキャリア支援課の上司から教わったものです。
調べてみると同じようなレベル分けが、いろんなところでさまざまな形で見つかり、どなたが発案者なのかは分かりません。
就職アドバイザーや採用担当者らが、それぞれが研究をすると、結局みなさん同じようなレベル分けに行きついているのかもしれません。
これです。
レベル2 やるべきことをやっているだけ
レベル3 主体的な行動ができている、周りに良い影響を与えられる、優れた実務能力がある
レベル4 PDCAサイクルを回せている
レベル5 画期的な提案ができている
そして、レベル3以上を自己PRと呼びます。
1つずつ説明します。
レベル1 主体性の無い行動しかできない
レベル1の例
・コツコツ努力できる
・ミスを繰り返さない
・仕事覚えが速い
・厳しい指導を受けてきた
・交友関係が広い
・苦しい状況にも耐えられる
要約するとこの2つです。
「与えられた仕事はちゃんとやります」
→指示待ち人間の可能性
「周りが強力です」
→すごいのは君ではない可能性
自己紹介するときに、「お風呂は毎日入ります」とか「二足歩行します」とか言わないですよね。
状況によれば「毎日お風呂入る」が必要な情報だったりもしますが、平時であれば自己紹介するときにそれは伝えません。
なぜですか?
当たり前だからです。
就職試験において、その当たり前がこのレベル1です。
採用側の気持ちとしては、
「こちらはできるだけ優秀な人が欲しいのだから、そんな当たり前のこと話してくれなくていいよ」
です。
また、
「厳しい指導を受けてきた」とか「交友関係が広い」は、
「君自身のPRになってないよ」
です。
ただ、勘違いしないでほしいのが、「これらはNGワードだから絶対に話してはいけない」というものではありません。
自己PRのメインテーマとしてはふさわしくないということです。
ふさわしいメインテーマがあり、その補助的エピソードで使うのは、全然オッケーです。
NG例
「交友関係が広い」エピソード
「私は自己PRとして交友関係の広さを挙げます。子供のころからグループの中心にいることが多く~」
OK例
「アルバイト先の業務改善提案」エピソード
「私は長所である企画力と実行力を生かし、アルバイト先飲食店の業務改善を1年間かけておこないました。私は元々交友関係がとても広く、~」
レベル2 当然やるべきことをやっているだけ
例
・笑顔で丁寧な接客ができる
・バイトリーダーになれた
・いつも前向きに取り組む
・(好きな)物事を継続できる
世の中には、これさえできない人も大勢います。
もしかしたら君もできないかもしれません。
それでも構いません。
できたとしても、できないとしても、これを自己PRにしてはいけません。
採用側の気持ちとしては、
「わざわざアピールしなくても、それくらいのことはできてよ」
です。
もっと言えば、
「えっ!?その話が自己PRでいいの!?」
です。
学生の方は特に「バイトリーダー」を推しがちです。
「バイトリーダー」がNGワードというわけではありません。
「バイトリーダーになれたこと」を自己PRのメインにしないでくれということです。
なぜなら採用側にとって、
「バイトリーダー」イコール「長く続けただけ」
だからです。
「そんなことアピールしないでよ」
です。
NG例
OK例
レベル3 主体的な行動・周りに良い影響・優れた実務能力
例
・突発事故に臨機応変に対応できる
・率先した行動で周りへ良い影響を与えている
・クレーム対応に長けている
・仕事に直結する実務能力(再現性)がある
ついにここからが自己PRと呼べるシロモノです。
ポイントは「主体的な行動」と「周りに良い影響」です。
「主体的な行動」とは、
「別にやらなくても済むこと」や「誰かに任せることもできること」を、自ら進んで取り組むことです。
「周りに良い影響」とは、
自分以外の人の「行動」を変えることです。
喜ばせる・驚かせる・感動させるというような、人の心を動かす「周りに良い影響」ではありません。
あくまでも行動を変えた実績のことです。
心を動かしたエピソードはメインではなく、レベル1レベル2同様に補助的エピソードとして使います。
少なくとも「主体的な行動」。
できれば「主体的な行動」で「周りに良い影響」を与えたエピソードが良いです。
OK例
GOOD例
「そんな経験ないよ」
と思った人もいますよね。
重要なのは、今までの君の体験談を、「主体的な行動」風にして、「周りに良い影響があった」風に、話すということです。
ばっちりこのレベル3に当てはまる行動の経験がなくても、なんとかこの形に当てはめられそうな行動を見つけて、この形で話を構成してください。
もしまだ君が就職試験に間に合うのであれば、今すぐ、今夜のアルバイトで「主体的な行動」をして周りを巻き込んでください。
仕事やバイト、ゼミやサークル、現在している活動で、今すぐネタ作りをしてください。
また、優れた実務能力と言うのは、受験先の企業の実務に直結する能力があることです。
いわゆる「再現性」が高いというやつです。
未経験者歓迎のITエンジニア職に、豊富なプログラミング実績をPRするなどです。
レベル4 PDCAサイクルを回せている
PDCAサイクルとは、
①Plan(計画) …現状把握、問題点の洗い出し、課題分析
②Do(実行) …Planに基づいた実行
③Check(評価・検証) …Planで掲げた目標がDoによりどれだけ達成されたか
④Action(改善) …改善案の検討、計画の立て直し
を繰り返し改善を図ることです。
「PDCAサイクル」、聞いたことくらいあるかな。
なんだか小難しそうな言葉ですが、全然難しくないです。
「えっそんなことだったの!?普通じゃん!」
って拍子抜けする可能性も高いです。
元のエピソード
何も考えず作った自己PR
PDCAに当てはめて再構成
① Plan(計画)
・高校を卒業したのだから少しでも自立したいと思っていた。
・スマホ代や通学定期など、学費以外の生活費は自分でまかないたい。
・人見知りや引っ込み思案の性格も直したい。
・飲食店でアルバイトすれば強制的にコミュニケーション能力が高まるはず。
② Do(実行)
・飲食店でアルバイトを始める。
・仕事をできるだけ早く覚える。
・常連さんに世間話をする。
・子どもがいたら必ず声をかける。
③ Check(評価・検証)
・通常業務に必死でプラスアルファの接客ができない。
・初めてのお客さんとはうまく会話できない。
・コロナの影響で客が少ない。
④ Action(改善)
・暇なときは店の前に立ち、呼び込みをする。
・初めてのお客さんでも、必ず、初めと途中と帰り際に事務的フレーズ以外の会話をする。
PDCAサイクル型自己PR
結局話し方です。
構成の仕方次第です。
後づけで結構です。
君の経験をPDCAに当てはめて作り直すのです。
たとえPDCAという言葉を今初めて聞いたのだとしても。
その経験はPDCAだったと言い張るのです。
実際にPDCAで行動しろとは言ってないですよ。
話せと言っているだけです。
実際にPDCAサイクルを意識して行動するのは、働いてからで結構です。
今は「おっこいつ、天然PDCAくんだ」
と思われることが目的です。
レベル5 画期的な提案ができている
まったく新しい改善提案や独創的なアイデアにより、仕事やアルバイト、部活動・サークルやゼミにおいて、状況を一変させるなどの、優れた実績を上げた。
これはなかなか難しい。
無理やりレベル5風を装うのも難しい。
レベル4のPDCAサイクルのように、元々持っていた自分の経験を色付けするのとは違い、特別な出来事がなければ作れません。
面接試験で、「ウソや誇張」は当たり前ですが、バレてはいけません。
バレなくても、怪しいだけで不合格になります。
「ウソや誇張」は当たり前の世界でも、「ウソっぽい」「誇張しすぎている」と思われたらアウトです。
このレベル5クラスの内容だと「ウソや誇張」では無理です。
面接試験のときに深掘りされると、まずバレます。
そのとき、面接室全体に逃げ出したくなる嫌な空気が流れます。
生き地獄です。
レベル5に当てはまる経験がある人は、その経験をPDCAの伴奏に合わせて唄い、面接官を感動させてください。
まとめ
今回の記事は「正解の自己PR」の姿の紹介でした。
まとめておきます。
自己PRレベル3以上のものだけが自己PRと呼べる。
レベル2 やるべきことをやっているだけ
レベル3 主体的な行動ができている、周りに良い影響を与えられる、優れた実務能力がある
レベル4 PDCAサイクルを回せている
レベル5 画期的な提案ができている
・少なくともレベル3で作らなければならない。
・可能であればレベル4のPDCAに乗せて構成する。
・レベル5の経験を持つ人は、その経験をPDCAに乗せて構成する。
ウソや誇張でレベル5を作ってはいけない。
必ずはバレます。
だから基本的には、目指すのはレベル4です。
今まだ就活に時間がある人は、レベル3・レベル4を意識した行動を、今すぐ始めましょう。
次回の記事では、「正解の自己PR」に相応しい内容について詳しく書きます。
自己PRが書けない②合格レベルに書く法則・コツ・例文・テンプレ
大丈夫大丈夫。
必ずうまくいく。
ワクワクして社会に出られます。
ムネハル 40代男 就職転職アドバイザー